住まいのコラム

家づくりの本音とコツ

| 第 56 号 |

キッチンの向こう側

2023年2月24日 火曜日

こんにちは。建築士のkobaです。
今回は高校生の頃に授業で受けた質問の話です。

ある授業で、家の間取りの話になり、日あたりのいい場所に、どの部屋を配置すべきかという問いを与えられました。

ほとんどの生徒がリビングと答えるなか、私が答えたのはキッチン。
なんとも的外れな回答という雰囲気になったことが強く印象に残っています。
私にしてみれば、何でキッチンじゃないの?という気持ちでしたから。

 

私の実家は、いわゆるダイニングキッチンに人が集まる家です。

壁にL型のキッチンが張り付いていて、大きな窓と、庭に出入りもできるテラス窓。ご近所さんもここからやってきます。

2階の子供部屋に上がるための階段もここ。いわゆるリビング階段ではなくダイニング階段です。
お茶を飲んだり、お客さんと食事したり。母も1日のほとんどをこの場所で過ごします。

子どものころは、夏休みの工作つくったり、料理に挑戦したりしました。とにかく何にでも使う場所がわが家でいうところの「キッチン」だったわけです。
 

いわゆるリビングもありましたが、「キッチン」に隣接する6畳の和室のほうが、ごろごろできて人気の場所で、リビングは、ほかの家族とはちょっと違う過ごし方をしたい人が使うサブ空間という位置づけです。

 

授業でのトンチンカンな答えは、わが家で使う、場所のネーミングと使いかたが、一般的なものとズレていたことが原因でした。単純な私は、わが家の常識で答えてしまっていたわけです。

 

このことはちょっとした教訓になっていて、設計の仕事をしていく中で、建て主さんの言葉の向こう側にある意味を考えてしまいます。言葉と意味にズレがあったりするので注意しています。

そのご家族にとっての「わが家ならではの常識」であることが多々あるんです。ご家族にとっては普通のことなので、わが家の常識は、私の前をサラリと通り過ぎようとします。
その尻尾をつかみ損ねないように、意味をとらえるように、頑張っています。

建築士 koba